声教保護者会2024-2025④ 「10月11月モヤモヤ…併願校どう決める?」
出典:声教チャンネル(声の教育社)
記事:metasc
▼今回のテーマについて
併願校の選び方についてお話しします。
受験校のスケジュールをどう組み立てるかは非常に重要です。
東京・神奈川エリア・・・2月1日
千葉エリア・・・1月20日
埼玉エリア1月10日
から受験がスタートします。この受験日程をどのように組み合わせるかで、合否にも大きな影響が出てきます。
▼併願校とは
併願校の基本的な考え方は「オマケ」ではなく、複数受験する本命校以外の学校であり、そのスケジュールを戦略的に組むことを「併願作戦」と言います。併願作戦は偏差値を参考にし・・・
➀「チャレンジ校」を設定します。チャレンジ校は模試の結果を参考にし、偏差値が5~10ほど上の学校を目指すことが一般的ですが、学校選びが偏差値だけではないことも重要です。上を目指す目標として、チャレンジ校を視野に入れるという考え方がよいと思います。
②自分の実力とほぼ同じ偏差値帯の学校「実力相応校」を選ぶと良いでしょう。
③コンディションが最悪のときでも合格できる学校、いわゆる「安全校」や「お守り校」を併願校に含めることで、受験において安心できる結果が期待できます。
▼安全校の選び方
長年塾で子どもたちを見ていると、成績には波があり、大人も子どもも同じようにアップダウンがありますが、特に子どもたちの波は大きいですよね。
チャレンジ校は「瞬間最大風速」のイメージで偏差値が最高値に達した時を目安に設定します。
一方で「こんなはずはないだろう」と思うような成績、たくさん模試を受けていると平常時よりも15くらい偏差値が下回ることが出てきます
そのため安全校は「偏差値が大きく下がることがある場合、そこを基準にした学校」を目安に設定することになります。
得意科目の成績は比較的安定していることが多いですが、苦手科目はなかなか伸びず、その差が固定化している受験生もいます。時には、得意科目で予想外に点数が取れなかったということもあるため、「得意科目の成績が落ちても合格できる」学校を安全校として選ぶことが重要です。
また、安全校の選定には・・・
・合格することが第一
・通ってもよい
・子どもを安心して預けられる
といように納得できる学校を慎重に選びましょう。「学校のレベルが低いのは…」と不安に感じる保護者もいますが、安全校こそ・・・
・学校の方針
・日頃の取り組み
・生徒の様子
・進学実績
などを、チャレンジ校を選ぶ時以上にしっかりと確認してください。「ここなら安心して通わせられる」と思える学校は必ずありますので、きちんと探して見つけてもらいたいです。
▼地元の公立中学校を選択肢に入れる場合
地元の公立中学校と私立中学校を比較する際、近隣の公立中学校が・・・
・しっかりした生徒指導や生活指導を行っている
・都立高校や有名私立高校への合格実績もある
ということで「ここなら安心して子どもを任せられる」と感じられるのであれば、積極的選択として公立中学校も検討する価値があります。必ずしも私立中学校にこだわる必要はありません。
ただし、よく調べないで「この私立中学校に入れないなら近くの公立中学校でいいか」という安易な気持ちで決めるのはおすすめしません。公立中学校のほうが合っていると感じる場合ならば、それでも良いのです。
大切なのは、受験生本人も納得した上での選択です!
公立中学校を選ぶ理由として、「友達が行くから」などの安心感があるかもしれませんが、友達関係は小学校6年間や中学校3年間で変わることが多いものです。「友達がいるから」という理由だけで決めるのは、短期的な視点になりがちです。
また、受験勉強が大変な時期や成績が伸び悩んで気持ちが不安定な時に、地元の公立小学校での友達との楽しい日々が「やっぱり一緒に公立中学校に行きたいな」という気持ちになることもあります。小学校5年生から6年生にかけてクラス替えで友達が変わるように、今後友人関係も変わるものなので、その一時的な気持ちに流されず、冷静に学校選びをしてほしいと思います。
▼合格判定模試成績の捉えかた
第一志望校やチャレンジ校の合格判定が「微妙です、再検討が必要です」と出た場合、志望校をすぐに再検討したほうが良いのか迷うこともあると思います。
ですが・・・画面や紙の上の機械的に算出された数値だけで判断せず、塾や家庭教師といった専門家の意見も取り入れることが大切です。
「今回の模試結果はこうだけれど、この子は瞬間最大風速がここまである、高得点を取った経験があるから、一発逆転の可能性もある!」
というように、専門家の目で見た「人の肌感覚のある」データも参考にしましょう。第一志望校を今の段階で変更しなくても大丈夫な場合も多いです。
お子さんの受験は、たとえ上のお子さんが経験していても、毎回新しい挑戦です。初めて受験する学校や未経験の志望校もあるでしょう。
中学受験には・・・
「9月には全然偏差値届かなかったけれど、10月から12月にかけて改善し、最終的に合格した!」
というケースも多くあるため、受験の判断は塾の先生の経験豊富な意見を伺うのが良いでしょう。
▼12月における受験校の判断
12月になると、9月から始まった合格判定模試や過去問演習が次々と進んでいきます。冬期講習の前あたりになると、模試の偏差値も安定してきて、信頼できる平均値が見えてくる頃です。9月から12月までの4回分や、さらに4月や7月にも受けていれば多くのデータが蓄積されます。別の塾の模試も受けることで、6回、7回と試験データが集まり、平均値がより明確になります。このデータは、野球の打率のように、受験の安全校やチャレンジ校の判断材料として役立ちます。
では、例えばチャレンジ校の判定が「4打数ノーヒット」つまり「4回連続で合格圏外」という結果だった場合、志望校を変更するべきでしょうか?
答えは・・・自分だけで判断して変更するのは早計です。模試の判定で30%の確率しか出ていなくても、「この確率なら受験をやめたほうがいい」と決めつけるのではなく、塾の先生などの専門家に相談するのが良いでしょう。
この段階では、塾の先生に「今の成績から、残り1ヶ月で合格の可能性があるのか」と相談しながら、すり合わせていくのが大切です。
受験のプロである専門家でも、「一発勝負あるかな、厳しいかな」と感じる子が実際に受験してみたら「合格しちゃった!」ということがよくあります。
塾講師時代、例えば吉村さんが算数担当で、私(石井)が社会担当、さらに国語と理科の講師もいて、受験が近づくと模試の結果を見ながら各教科の講師が集まり、受験校についてのミーティングを行いました。そこで「今の偏差値はこうだけど、この子にはこういう得意分野がある」というように、お互いの教科ごとに「合格に必要な要素」について話し合い、「ひょっとしたらいけるかも!」と意見を出し合いました。
特に、社会と算数は全く異なる性質を持つ教科なので、社会担当は「この偏差値では厳しい」と考えても、算数担当は「いや算数であと10点上がれば何とかなるかも」と見積もることもあります。教科ごとに視点が異なる分、まるで「合格の予算を出し合う」ようにやりとりをしていました。
学校や過去問によっても模試とは異なる結果が出てくることがあるため、偏差値だけでなく、塾の先生たちは日々の指導経験から「この子なら偏差値以上の学校にいけそうだ」という実感を持っているはずです。12月は、受験校の最終決定に向けた保護者面談の時期ですので、ぜひ先生方にお子さんの現状について率直な意見を聞いてみてください。「これを聞いていいかどうか」と迷うことも含めて、積極的に相談されるとよいでしょう。
私(石井)は、状況が難しそうでもチャレンジさせるタイプでした。
ただしチャレンジする条件として・・・
「安全校の合格が確保できていること!」
そうであれば、思い切って挑戦しましょう。「中学受験は人生で一度きりですからね」と勧めていました。
繰り返しになりますが、専門家であっても年に2、3人は「予想外に合格した!」というケースを目にすることがあります。つまり・・・
専門家の見立てでも100%とは言えず、予想外の合格は意外と多いのです!
「チャレンジ=無謀な受験」という意味ではなく、気をつけるべきは「無謀なスケジュール」にならないことだけです。