【中学受験】2024年度どうだったのか?~2月入試 共学校編・後半~昨年よりは倍率緩和?次年度はどうなる?
出典:声教チャンネル(声の教育社)
記事:metasc
共学校編の後半です。2024年度入試における共学校の高実倍率校の結果を振り返っていきます。高実倍率を見ると、つい感情がこみ上げてきますね。後半日程にかけて受験する受験生たちの想いを考えると、「もっと合格者を出してあげてほしい」と思わずにはいられませんが、学校側も最終試験であるため、そう簡単にはいかないのが現実です。ただ、昨年の2023年度入試では、日程のほぼすべての入試回で10倍以上の倍率が続いた学校がありましたが、2024年度はその傾向がやや緩和されたようです。前半日程も比較的落ち着き、受験生が分散した印象もありますね。
【2024年度入試 共学校 5倍以上の高実倍率校例】
開智日本橋学園
横浜創英
桜丘
芝浦工業大学附属
駒込
サレジアン国際学園世田谷
ドルトン東京学園
三田国際学園
関東学院
桐蔭学園
法政大学第二
森村学園
山手学院
東海大学付属高輪台
東京電機大学
東京都市大学等々力
東京農業大学第一
広尾学園
広尾学園小石川
渋谷教育学園渋谷
淑徳巣鴨
文教大学付属
法政大学
明治大学付属明治
安田学園
青山学院横浜英和
神奈川大学附属
日本工業大学駒場
日本大学第一
日本大学第三
▼高実倍率校例①~⑪
□開智日本橋学園
2024年度入試において特に注目を集めています。今年は応募者数が非常に多く、特に2月4日の4科入試での倍率が10倍を超えた点が際立っています。一般的には、2科選択の方が倍率が高くなる傾向がありますが、ここでは4科受験が人気を集めた結果、逆に4科の方で高い倍率が生じました。 特に後半日程では、受験生にとって非常に厳しい状況が続いたことがわかります。
ただし、この高倍率の背景には、開智所沢と併願している受験生も含まれている可能性がある点にも留意する必要があります。両方の学校を受験した受験生が数字を押し上げている可能性があるのです。
□横浜創英
例年非常に高い倍率を維持しています。今年も・・・
2月1日の試験でも7.8倍
2月2日の2科試験では19.8倍
という厳しい競争率です。また・・・
2月6日では18.5倍
になっており、合格者数はわずか10名。その中でも女子の合格者は1名のみで、女子の倍率は驚異的な49倍となっています。偏見かもしれませんが、女子の方がいち早く情報をキャッチしやすい傾向があるように思います。高校受験でも、共学化や新しい取り組みに対して敏感に反応するのは、女子が多く、実際に倍率も変動するという傾向もあります。中学受験でも、親子で話し合いながら進学先を慎重に選ぶ過程で、女子受験生の方が、女子校の数が多いため選択肢が多いのですが、新しい挑戦をする学校に魅力を感じ、その意思を尊重し倍率が高くなる傾向があるようです。特に、共学校でも女子に人気が集中するケースがあり、その影響が倍率に現れているのではないかと考えられます。
□桜丘
2科入試はやはり高倍率です。しかし、これは・・・
「特待チャレンジ入試」であり、しかも「3年間特待生」となるチャンスがある
点が重要です。高校に進学すると東京都の手厚い「就学支援金制度」が利用できるため、中学の3年間だけでも特待生になることは非常に大きなメリットです。
この特待チャレンジ入試では、1回目の試験で合格している受験生が再度チャレンジするケースも多いと考えられるため、倍率が17.6倍だからといって「もう無理だ」と考えすぎなくてもよいかもしれません。ただし、スライド合格は導入されていないようです。
今回ご紹介している高倍率校の中には、「スライド合格を導入しており倍率が5倍以下」の学校は基本的に含まれていません。
□芝浦工業大学附属
引き続き高い人気を誇っています。特に2月2日からの入試は高倍率が続き、非常に厳しい状況です。個人的な感覚ではありますが、倍率が4倍を超えると、実力だけでなく運の要素も大きく影響するように感じます。それだけに、2月2日の6倍という倍率は特に厳しいと言えます。
理系大学の附属校としての人気が高まることは理解できますが、この傾向は今後も続く可能性が高いのではないかと思います。
□駒込
算数1科の入試が特に厳しい結果となったようです。特待入試のため、算数の問題の方が少し難易度が高かった可能性があります。おそらく、得点順で合格者を決めた結果、国語の方が比較的多くの12人が合格したのかもしれません。このような特待入試では、合格者数だけでなく、学校が定めた基準を超えないと合格が難しいということもポイントです。
□サレジアン国際学園世田谷
新しい学校として大きく注目されています。特に・・・
2月1日の入試では10倍という高倍率で合格者はわずか2名
と非常に狭き門となっています。おそらく、芝国際学園を志望していたものの、開校1年目の高倍率やその他の要因を懸念し、サレジアン国際学園世田谷に受験生が流れた可能性があります。来年度には、この倍率が少し緩和される可能性もあるかもしれません。また、注目すべきはインターナショナルAGの英語・英語エッセイ試験です。この試験の倍率も非常に高く、英語のみでの合格は難しいという現状は、共学校でも同様に見られるようです。
□ドルトン東京学園
特に2科の入試が非常に厳しいです。
2月1日午後の試験では、倍率が15倍
に達しています。特待生としてのスライド合格制度もありますが、スライド合格を含めても倍率は6倍と高めです。ドルトン東京学園はそのユニークな教育方針で非常に魅力的な学校です。実際、学校を訪れると、生徒たちは常に活気があり、文化祭の前日かのような雰囲気で楽しんでいる様子が見られます。
そのため、ドルトン東京学園を志望する気持ちはよく理解できますが、偏差値以上に入試の難易度が高いのが現実です。塾の先生方の話によれば、ドルトン東京学園の特徴的な校風に惹かれ、他の学校を併願せずに全日程ドルトン東京学園のみに挑戦する受験生もいます。しかし、その結果、合格を逃すケースも毎年報告されています。特に2科でのチャレンジは厳しいものがあるため、慎重に考える必要がありそうです。
□三田国際学園
2024年度の入試倍率は10倍には達していないものの・・・
英語1科入試9.9倍
と非常に高い水準です。他の高倍率の試験回も入試科目は英語、算数、国語の3科目構成です。高倍率になっているのは、英語が入っている試験回なので、4科をしっかりと受けるような場合には、それほど極端に高い倍率ではないという特徴があります。
もしかすると敬遠されてチャレンジをする受験生が減っているため、比較的安定した倍率になっているのかもしれません。この点では、急激に人気が上昇したドルトン東京学園とは対照的です。三田国際学園は、過去に同様の人気急上昇を経験し、結果も出して安定してきているということになりますね。
□関東学院
神奈川の関東学院ですが・・・
2月5日の午後入試で倍率が8.6倍
と非常に高いですね。このように、最終回の入試は人気校において特に高倍率になる傾向が見られます。
□桐蔭学園
関東学院と同じように、2月5日の2科入試は16.0倍ととんでもない倍率になっています。
□森村学園
2月4日の2科入試では・・・
倍率が33倍で、合格者は1人だけ!
という厳しい結果でした。確か、これが男子だけの合格だったと思います。女子は合格していませんでした。2月3日までに出された男女の合格者の合計から考えると・・・
・2月4日の段階で森村学園は予想以上に手続き率が良く、追加で合格者を出す必要がなかった
・入試の基準を上げて4科入試にシフトし、そちらで多くの合格者を出した可能性
も考えられます。さらに、森村学園は来年度から高校募集を再開予定ですので、今後は学校の入学生の学力にもさらに高いレベルを求めていく方針かもしれません。
□山手学院
2月6日の最終入試回ですが、2科の方が少し倍率が低めですね。
2025年度の山手学院では入試の変更があります。
・2月6日の後半日程の入試は実施しない
・特待入試が2月2日の午後に開始
推測ですが、4科の倍率が7倍で、2科の方が4.8倍という結果から見ると、学校側が求める学力の高い受験生が2月6日にはあまり集まらなかった可能性が考えられます。このことから、特待入試を早い日程に設定し、より優秀な生徒を早期に確保したいという意図があるのかもしれません。
□東海大学附属高輪台
2月5日の試験では倍率が6倍とかなりの高さです。この学校には熱心に志望する受験生が多く、安定した人気を保っています。2月5日までの時点で、どこかに合格を確保しておいて、6倍の倍率でも志望校に挑戦するのはよいと思います。
□東京電機大学
前半で紹介した応募者数最多校のひとつ、東京電機大学ですが・・・
2月2日の2科入試で7.6倍という高い倍率
を記録しました。また、2月4日の午後には4科から2科を選ぶ「得意2科目入試」という形式で、4科から得意な2科を選んで受験する仕組みがあり、こちらも倍率が5倍を超えていたのが印象的です。この入試形式は、受験生にとって自分の強みを生かせる場であるため、挑戦する受験生が多く集まったのでしょう。
□東京都市大学等々力
毎年高い倍率を誇る東京都市大学等々力ですが・・・
アクティブラーニング型の入試が10.6倍と高倍率です。
筆記試験とは異なる形式なので受験者数はそれほど多くないものの、倍率は依然として高いです。このような新しい入試形式で高い倍率を維持しているのは、学校の強い意志感じさせます。実際、アクティブラーニング型の入試はかなり前から行われています。
□東京農業大学第一
今年の倍率は8.0倍ですね。
来年度定員は増える予定ですが、2月1日午前中に新たに試験を実施することで、2月4日の試験の定員数は減るはずです。募集合計定員は増えるのですが。2月1日の午前中に40人を新たに設定するので、2月1日の午前中の受験者数に基づいて、2月4日の試験では合格者数が少なくなる可能性があります。東京農業大学第一を目指す受験生の数は増加しているように感じます。8倍という倍率は、318人が受験する中で、併願校に合格していてチャレンジできる状況であれば問題ないですが、そうでなければ受験するのが難しくなるかもしれません。
□広尾学園
2月5日に実施されるインターナショナルSGの4科入試に関しては、倍率が15.7倍となっています。しかし、スライド合格を考慮すると、実質的な倍率は4.3倍になります。そう見ると、極端に高い倍率ではなく、これまでの倍率と比較しても少し緩和されている印象です。
□広尾学園小石川
広尾学園小石川についてですが、広尾学園と併願している受験生も多いかと思います。主に2科入試が中心で、そういった入試形式では倍率が高くなる傾向があります。ただし、スライド合格を含めると、実質的に倍率が10倍を下回る場合も見られます。
一方で、インターナショナルSGに関しては、本科の合格者数も含まれるため、その点を考慮する必要があります。特に、2月3日午後の本科試験や、2月6日午後の本科試験は、厳しい倍率が予想されると言えるでしょう。
□渋谷教育学園渋谷
最後の試験回は、当然ながら高い倍率になります。特に、受験生のレベルがどんどん高くなっている印象があり、8.4倍という数字以上に難易度が上がっているように感じます。チャレンジ層がいるからといって楽になるわけではなく、この傾向は今後も続くのではないかと思います。
□淑徳巣鴨
声教チャンネルでおなじみの石原先生のいらっしゃる学校です。こちらも2科入試は厳しい状況です。定員が105名から140名に増えます!
しかし、学校全体のレベルも徐々に上がってきており、2科入試の厳しさは今後も続くでしょう。また、4科でしっかり勉強している受験生の方が有利になる傾向は強いと思われます。
□文教大学付属
文教大学付属は、2月2日午後の2科入試で倍率が5倍を少し超えました。最近、文教大学付属の名前をよく耳にするようになり、人気が高まっていることが感じられます。また、校長の神戸先生も若くて、学校全体に活気を感じますね。
□法政大学
常に人気の高い大学付属校です。特に後半の日程では高倍率となりますが・・・
男子が5.9倍
女子が7.4倍
やはり付属校は女子の方が倍率が高くなる傾向があります。
□明治大学付属八王子
人気の大学付属校で、後半の日程では高倍率となっています。
□安田学園
来年度の募集人数が180名から240名に増える予定です。
これがどのように影響するかが注目されます。2月2日の午後入試で、合格者をもう少し多く出してくれると嬉しいですね。進学を希望する受験生にとっては、手の届かない学校ではなくなるかもしれません。
□青山学院横浜英和
来年度の入試日程が変更されます。
・3回試験から2回試験へ
・各回の定員が増える
そのため、倍率が緩和される可能性があります。ただし、応募者が増えると、結局競争は激しくなるかもしれません。
□神奈川大学附属
2月4日の入試で倍率が9.5倍となっています。
多くの受験生が第1志望として受験していることが、この高倍率につながっていると思われます。
□日本工業大学駒場
共学校編の前半でも話題になった光風塾、本当にすごいですね。他の学校でも、学校が運営する学内予備校のようなものはありますが、光風塾は専用の建物を設け、学校とは別の場所で運営され、大学合格実績を出しているのが特徴です。しかも、日本工業大学駒場の生徒しか入れず、さらに塾に入るためには選抜試験があるそうです。
日本工業大学駒場は、ただ「入学して良かった」と思うだけでなく、入学後もきちんと勉強させる仕組みが整っています。また、光風塾に入れなかった生徒でも、学内には講座や学習システムがしっかりとあり、光風塾の生徒と切磋琢磨できる環境があると聞いて驚きました。それが人気の理由なのでしょうね。
ただ、興味深いのは・・・
2月2日の「得意2科」入試の倍率が高い点です。2月3日の「得意2科」はそれほど高くないので、2科や4科の入試を受け続ければチャンスがあるのが今年の傾向だったようです。しかし、人気はますます高まっているので、来年どうなるかは予想がつきませんが、学校としては、受験生に対して親しみやすさや配慮をアピールしているのではないかと感じます。
□日本大学第一
□日本大学第三
安定した人気で、やっぱり2科は5倍を超える入試がありました。
▼高倍率状況まとめ
・実倍率は多少分散
・2科入試や英語入試については依然として厳しい状況
後半の日程ではある程度分散しているものの、全体として高実倍率校が増えていることには変わりありません。皆さんもそのことをよく理解しているようで、どこかの学校で合格を確保した上で、高実倍率校にチャレンジする受験生が増えているのではないかと期待したいです。しかし、ドルトン東京学園のように1校のみを受験し、すべて不合格となってしまうリスクもありますから、やはり早めにどこかで合格を取っておくことが大切ですね。
また、これはすでに定着している事実で、皆さんもご存知かと思いますが、以前は午後入試といえば午前中に本命校を受け、その後に併願校として午後の試験を受けるという考え方が一般的でした。そのため、学校側も午後の試験では合格者を多めに出す
というイメージがありました。しかし、今では状況が変わっており、
午後入試でも合格をあまり出さない傾向
にあります。合格者数が多くなりすぎるのを避けるためです。
そのため、午後入試なら受かるだろうと油断している人は少ないと思いますが、もしそう考えている方がいれば、前年度までの倍率や合格者数をしっかり確認して、油断せずに備えることをおすすめします。
▼2025年度入試に向けて
入試の変更が多くありました。早めに合格を確保した上で、後半の日程にチャレンジしていくのは、良い戦略だと思います。今年は・・・
・模擬試験は7月受験生が増加
・首都圏模試を受ける受験生が増えている
・駆け込みで中堅人気校に応募者増の可能性
・大学付属校人気の可能性
という傾向が見られます。駆け込みで受験準備を始めたため、急に受験勉強を始めたので、中堅レベルの学校で2科目入試に挑む方も多いかと思いますが、2科目入試は厳しい試験が多いため、選択肢を広げて考えてほしいですね。
大学付属校の人気も高まっています。付属校の人気は、隔年現象が起こりやすいと言われますが、今年はコロナの影響で受験に疲れた家庭が多く、「大学付属校を選びたい」という考えが例年以上に増えているようです。7月の過去問の出庫状況を見ても、付属校の売れ行きが好調だったようです。11月にはさらに詳しい過去問出庫率の報告がありますが、大学付属校が人気だという話が聞こえてきます。
繰り返しになりますが、中堅人気校への応募者が非常に増えているため、特に後半日程で何とか合格を確保しようと考えている方は、予想以上に厳しい状況になる可能性があるので、十分注意してください。
▼次回に向けて
共学校の話が終わったところで、次は1月入試についてお話します。
・1月入試を前受け校として受験する受験生の動向
・開智所沢を受ける東京都の「合格したら通う可能性がある受験生たち」の動向
に触れていきます。
前受け校というのは、基本的に合格しても実際に通うことが少ないケースが多いですが、開智所沢の場合、武蔵野線で少し北に向かえば抑え校として利用できるのが特徴です。開智所沢の開校によって、埼玉入試の流れが少し変わってきています。さらに、西武文理学園も人気を集めており、この辺りを整理しながらお話していきたいと思います。