声教保護者会2023-2024③ 夏だ!大人がやるべき過去問準備
出典:声教チャンネル(声の教育社)
記事:metasc
受験生の皆さん!夏期講習は毎日休まず頑張って通っていただきたいと思います。しかし、保護者の皆さんは夏休みの間に子どもたちがやった方がいいことがあるのではないかと考えるかもしれません。夏休みが終わり、9月からはいよいよ過去問が始まります。そういったこの時期の準備や、実際に学習を始めたらどんな感じになるのかという部分について、今回はお話ししたいと思います。
▼過去問を解く前の準備
!過去問は早めに購入!
販売年度が記載されています。各年、売り切れても重版はしないので志望校が決まっている場合は早めの購入をお勧めします。これから9月、10月上旬にかけても順次発売されていきます。
過去問は解答用紙をコピーして使用されると思いますが、解答用紙は去年から過去問冊子の巻末にあります。入試結果表の前の部分にもコピー方法が記載されているので、ぜひ参考にしてください。
<解答用紙のコピーのしかた>
コピーは必ずしもきっちりしなくても良いとは思いますが、社会の記述の問題や算数の途中式などを書く場所がないと困るので、指定の倍率でコピーすることをお勧めします。
ただし、冊子にする関係上、問題の文字が詰めてある場合もあります。したがって、問題の表示が実際のものとは少し異なることがあることもあります。算数は計算用紙を別途用意することもお勧めします。
▼過去問を解く頻度とタイミング
解いた過去問は塾に提出する?
→塾によってさまざま、取り組み方にも差があります
過去問の提出や運用は塾によって違いがあります。具体的な例としては、1週間に1年分(1回分)の内容を進める場合、4科目1回分ずつ取り組むことになります。これだけの内容をやった後、丸つけしてやり直すだけでも、1教科60分から70分かかることがあります。1回分4科目を完了すると、280分以上の時間になります。通常の塾の宿題もあることを考慮に入れると、計画的に進める必要があります。
どう解く?
→いつ解くのか…よりは、1科目ごとの制限時間だけは中断せずに解くことが大切
保護者の方から、朝の本当の試験時間に合わせて過去問学習を進めた方がよいのか、よく聞かれることがあります。しかし、例えば大学受験で赤本を使って学習する際に、試験時間に合わせて朝やったかどうか?というとやっていないと思います。
重要なのは、1科目ごとに45分や50分などの集中時間を確保して、他のことに邪魔されずに取り組むことです。この時間を通して
☑タイムマネージメント
☑試験に対するスタミナ
をつけることが期待できます。
▼採点の方法
採点の方法については、自己採点が一般的ですが、塾によっては全ての問題を丸付けしてくれる場合もあるかもしれません。採点は難しい作業でありますが、私自身(吉村)も教室では子どもたちに自己採点をさせていました。「これが合っていると思ったのに」という思いをしながら採点を行う方が良いと感じています。
しかし、保護者の方からの問い合わせで、「うちの子は計算ミスがあるから、丸付けでもミスしそう」といった懸念があることも事実です。
自己採点をする際には、
模範解答に目を通して、自分の回答と模範回答の違いを見比べる
ことが大切です。
しかし、突き詰めて言うと志望校の先生の採点と一致するような採点を行うのはなかなか難しいということも言えます。
▼過去問の解き直し
<算数>
→全て直すのは途方もないこと!
→解き直す問題の取捨選択が合否につながる!
塾では子どもたちが過去問を持ってきて、「これがわからない」と質問することもあります。しかし、実際には「合格した子でも、大半の子はできなかったであろう」という問題もあります。そのため、間違っている問題を全て解き直しすることが合格に必要かどうかは一概に言えません。
私(吉村)自身は解き直す問題を指定して、「これとこれをやり直しなさい」と言うことがありました。 例えば最初の計算でのミスだったり、小問集合などは解説を見ながらでもやり直してもらうことが大切です。また、後ろの大設問などは「これはいろんな学校で必要だから、ちゃんとやろう」というように問題を指定して励ましていました。
☑必ず解き直す
・計算問題 ・小問集合
☑必要に応じて解き直す
・後半の大設問で出題されやすい問題 ・合否を分けるような問題
このような汎用性のある解き直しを促し、難問で時間がかかりすぎる問題よりも、合否につながる頻出の問題の解き直しをしようとアドバイスしていたのです。保護者の方へアドバイスするとしたら、正答率が15%の問題を解き直しするよりも、もっと正答率の高い問題の解き直しをすることをお勧めします。
<社会>
解き直しの方法には様々なものがありますが、特に私(石井)が社会科を担当していた際に感じたことがあります。
☑忘れないうちに解き直す
☑覚えたことを忘れない訓練が大切
社会科の学習では、「忘れないうちにやり直す」ことが非常に重要です。知識の科目として、覚え直す必要があることもあるでしょう。しかし、単に「覚える」よりも、「忘れない」ことがより重要になります。
夏休みは「受験生の健康診断」です。自分がどの知識を持っていて、何が欠けているのかの確認をする段階です。その後に過去問題を始めるのですが、この時点で知識が不足していると、問題を解くのは難しいです。
しかし、しばらくして解き直しを行う際、その時に解説をきちんと読むと「あれってこうだったんだ」と気付くことがあります。復習して知識が抜けずにしっかり定着している段階で解説を読めば、多くのことが理解できるようになるでしょう。
私(石井)が教室にいた時は、算数や国語の教師たちは毎週厳密にチェックを行い、子どもたちに対して直ぐにやり直しを指示していました。しかし、私自身はそういった厳密なチェックや指示は行わなかったのです。
知識系の科目では、子ども自身が自分で覚え直したり、忘れないようにトレーニングすることが重要です。もしそのトレーニングができない場合、私は子どもに目の前でその作業を行わせました。解説はもちろん読んで欲しいのですが、算数など反復が必要な科目の練習をすることに時間をかけました。
それぞれの4教科の学習に対する取り組み方は塾の先生の方針と保護者の方とコンセンサスを取りながら進めると良いでしょう。
2023年の中学校の問題を何回もやり直して完璧にすることも一つの勉強方法ですが、その問題は過去のもので、今後出題されることはないでしょう。だからこそ、出題されなかったが今後出るかもしれない問題も広く学習する必要があります。
大切なのは…
☑夏の勉強で欠けた部分を埋めること
☑凸凹がないように全体のバランスを整えること
9月以降の学習では、夏に勉強して穴になっている箇所を分析し、埋め合わせる作業が求められるのです。そういったバランス感覚と戦略的な取り組みが、最終的な成功へとつながるのでしょう。
▼解き直しの留意点
通常の塾の宿題も学校もあり、子どもはとても忙しいですよね。解き直しを宿題で提出しなければならないという気持ちが強すぎると、子どもたちは解き直しの失敗をしてしまうことがあります。例えば、社会の問題でグラフを描くような問題に対して、子どもが単に解答をそのまま丸写ししてきたり、直したのに間違った解答を書いてきたりすることがあります。 このような行動は、バレバレで、写して直しているところを見つけるのは痛いほど明らかな場合もあります。
2学期に入ると、過去問や模試の結果が出る時期となります。これらの結果には驚きの連続が待っています。特に9月に始めた過去問が解けない、点数が取れないと感じることもあるかもしれません。
もしも最初から過去問が解けている場合、原因と対応は大きく二つに分けられます。
① 夏に思った以上に力がついていた
→模試のデータを参考にしながら、目標を更に上に設定することを視野に入れる
② 解答を写してしまった可能性
→「よく見せたい」という子どもの心理を追い詰めない
過去問が始まると、子どもたちを追い詰めれば追い詰めるほど、解説参照などをしてしまいたくなる動きが多くなるので、保護者の方は落ち着いて結果を受け止めてください。 また、塾の先生は中学受験のゴールへの道のりを何度も見ており、経験値が数百倍あります。例年の受験生の様子や今年の受験生の状況をよく知っている先生に、ぜひご相談いただき、保護者の方もストレスを溜めないようにしてください。
最終的に大切なのは…
☑目標へ向かって最後まで進むことです。
☑途中で断念してしまうのは最も残念な結果となります。
保護者の方には、子どもたちの体調とメンタルのケアを最優先にしていただきたいです。心身ともに健康で、最良の状態で受験に臨むためのサポートをお願いします。この段階でのサポートが、子どもたちの成功への一歩となるでしょう。
▼次回の予定
今回は過去問に基づいて展開してきましたが、次回は…
「模試結果の捉え方」
についても詳しくご説明したいと思います。
去年も触れましたが、例えば模試で合格の可能性が30%と出た場合、それをどう捉えるかについての話題も含めます。受験に向けての心構えなども含まれる重要な内容です。
以上が今回の内容となります。